#24

32°45.2′N 130°45.7′E

(熊本県,日本)

2016年4月16日1時25分。14日の初震から28時間後、熊本県を震央にMj 7.3の地震が起こった。この時、益城町で観測された計測震度6.7は、現在国内最大の数字である。二度の震度7の地震に始まり、その後数ヶ月続く一連の地震活動は「熊本地震」と名付けられ、今も続いている。 震央の座標は気象庁により発表されている。実家から車で20分、GPSを追ってたどり着くと、そこは広大な農耕地のただ中であった。 座標が示した場所は畑の畝であったため、3メートルほど離れた水路脇の畔で石を探した。予想したようにそこには特別な石はなく、砂の堆積岩や熊本ではどこにでもあるような変成岩のかけらが枯れ草に覆われていた。その中にひとつだけ、重く密度のある石があった。灰色のゴルフボール大のそれは、阿蘇の溶岩か、地殻の底のマグマの塊のように思えた。 振りかえると、眼下に広がる一面の農地はただ静かであった。耕すことを放棄された土上に、雲雀の声だけが鋭く降りそそいでいた。そこには未曾有の惨事の跡など微塵も残ってはいなかった。ただし、この一個の石の12km直下で、人智を超えた鳴動が起き、いつものように「まさか」という言葉が繰り返されたということ。それだけが事実である。

採取者

KUROIWA. Toshiya
黒岩俊哉

1966年熊本市生まれ。実験映像作家。大学時代に実験映像の衝撃を受け、作品を作り続ける。近年では舞台や舞踏、パフォーマンス、音楽とのコラボレーションも多い。九州産業大学芸術学部芸術表現学科メディア芸術専攻教授。映像芸術論、映像芸術設計実習などを担当。福岡市在住。

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